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グラウビュンデン

私の住むグラウビュンデン州はスイスでもっとも広い面積を持ち、『スイスの中のもうひとつのスイス』といってもよく、スイスの4つの公用語のうち、3つの言語(ドイツ語、イタリア語、ロマンシュ語)を話す地域を含んでいます。アルプスの山々の中の150もある谷に、それぞれの文化が花開き、それを共存させてきたところは、ちょうどスイスが連邦としてのひとつの国家でありながら、言語や文化の独自性を村単位で尊重して共存させ続けているのと通じるものがあります。

Via Mala
Zillis
Poschiavo
Maienfeld
Arosa
Davos
Scuol
Soglio
Carschenna


Via Mala ヴィア・マーラ

 我が地元の観光名所。その昔、アルプスを越えようとする旅人は、この恐ろしく切り立った崖の合間をロバに乗って越えていかなくてはなりませんでした。Via Malaとは「悪路」という意味です。「ここ以外には通るところはないし、地元の案内人のロバでしか通れない」と言い張って通行料をせしめていたというのが、本当のところらしいです。
 いまから100年ほど前、「サン・モリッツへの保養客は突然高地に行って高山病にならないように、途中の高さであるThusisで10日間ほど中休みをすべし」ということになっていました。そこでThusis滞在中の観光の目玉としてVia Malaに階段を設置して下まで降りられるようになったのです。その後、「突然1500m以上の高度差へ行くのは危険」というのはナンセンスだということがわかったので、中間滞在地としてのThusisの意味はなくなりました。けれど、今でもVia Malaには日々観光バスが乗りつけて、その自然の驚異を楽しむ人で賑わっています。

 

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Zillis ツィリス

 Via Malaを越えて南にホンの少しいくと、そこが小さな村、ツィリスです。この村はひとえにその教会だけで有名なのですが、その教会ときたら本当に小さくて拍子抜けするほど。何が教会をこれほど有名にしているかというと、13世紀の木板にかかれた天井画がそのままの形で残っているからで、これはヨーロッパでも最古の部類に入るといわれています。この教会にそれが現在まで残っているのは、戦争の被害に遭うほどの重要な村ではなかったことと、宗教改革でプロテスタントの教会になったときに一度被われてしまい、そのために注目をあびずに生き延びた、という事情があってのことです。昔の人々はほとんど文字が読めず、また、ラテンで書かれた聖書など読む機会すらなかったので、こうした絵などで聖書の物語やキリストの生涯などを知りました。その当時の人たちが、この絵をみていた姿を想像しつつ、ひんやりとした教会で天井を見上げます。
 現在、教会の入場は無料で、有名といっても日本人観光客がバスで押し寄せるほどではありません。が、現在、この教会はユネスコ世界遺産への登録を申請中です。登録されちゃったりすると、まわりが土産物屋だらけになり、訳のわからない人がどたどたと押し寄せて、すっかり様相が変わってしまうのではないか、そんな危惧をしています。世界遺産になっても、このほのぼのとした雰囲気が変わらないでいてほしいものだと、むなしい願いを思ってみたりしています。

 

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Poschiavo ポスキアーヴォ

 グラウビュンデンの(ということはスイスの)もっとも南東のはずれ、イタリアのティラノにほど近いポスキアーヴォ谷に私とアンドレのお気に入りの世界が広がっています。イタリア語を話し、美味しいピザやパスタを食べれるけれども、決してイタリアではなくスイスだと思う不思議な空間です。石畳の街ポスキアーヴォでは、広場に張り出したレストランのパラソルの下で赤ワインを傾けつつ、街往く人をながめたり、ウェイターや他の旅人達と会話を楽しみます。小さい街は腹ごなしの散歩にも最適で、スペイン風のお屋敷の立ち並ぶ一角やちよっと不気味な骸骨納骨堂などを通りすぎ、夏の遅い日暮れを楽しんだりします。
 ポスキアーヴォから車や電車で8分くらい南へ走ると、静かな湖の広がるLe Preseにつきます。この湖畔に経つLe Prese Hotelのテラスでコーヒーやワインを楽しむのも私たちのお気に入りの過ごし方です。また、時々は湖を歩いて反対の端のMiralagoまで行き、テラスでご飯を食べることもあります。前回はつぎの駅のLe Preseまで電車で戻るつもりでしたが、うっかり最終電車を逃し、歩いて戻りました。月明かりだけの中を線路のわきの小道を歩く夏の夜は、腹ごなしだけでなく、ホンの少しだけロマンティックで、一人で盛り上がっていました。

 

     
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      Poschiavo, GR


    Poschiavo谷をのぞむ
     
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      Le Prese, GR


    Le Prese Hotelのテラス

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Maienfeld マイエンフェルト

 日本人がもっともよく知っているスイス、「ハイジの里」です。「せっかくスイスに行くんだからマイエンフェルトに行って山と牛とヤギをみたい!ハイキングもしたい」という人がよくいますが、それだったら別にマイエンフェルトまで行かなくても、我が家でも観られます。スイスといいうのは、都市の中心以外どこに行っても牛やヤギや山でいっぱいで、ハイキングコースで国が被われているような状態ですから。そういう意味では、マイエンフェルトというのは格別行くほどのことはないところです。いかにも観光客のために設けられたような「ハイジの泉」や「ペーターの小屋」などもうさんくさいですし。
 しかし、それでも私とアンドレは時々マイエンフェルト周辺までバイクのドライブに行きます。我が家から30分少々の近さで、グラウビュンデンでも有数のワイン産地のため、私たちの近くには観られないぶどう畑や穏やかな森の広がる景色と、すぐ側のバートラガッツの側にそびえる山の上のお城風ホテルのテラスで展望を楽しむ、2つの楽しみがあるからです。ここからホンのわずかで、国境。といってもお隣は半分スイスみたいなリヒテンシュタインなので、国境の税関も検問もありません。パスポートも持たずにふらふらとでたり入ったりできます。

 

     
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      Maienfeld, GR


    マイエンフェルトの近くのお城

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Arosa アローザ

 日本人にはあまりなじみのない観光地ですが、州都クールから一時間ほどで簡単に行けるリゾート地です。夏はハイキング並びに避暑地として、冬はスキー場としてにぎわいます。私の印象では、サン・モリッツやダヴォスほど敷居の高くない感じ。
 ま、リゾートそのものにはほとんど興味のない私ですが、何がいいかというと、このアローザに向う電車の旅がなかなかステキなのです。まずは、クールの街を通り抜ける路面電車として走り出し、それがあっという間に見事な渓谷美を楽しむ車窓に早変わり。飽きるちょうど手前ぐらいの時間で終わり、我が家からも往復に3時間もあれば足りるという手軽さです。ま、この手軽さのせいかかえって我が家を訪れた日本からの旅人でここへ行った人はまだいません。いったところで、特筆すべき観光名所もなく、湖の周りを散歩したり、ロープウエイでヴァイスホルンに登る、くらいしか出来ないんですけれど。ちなみにヴァイスホルンからは、壮大なパノラマが広がり、天気が良ければイタリアやユングフラウヨッホまで見渡せる、とのこと。私が行ったときは天気は良かったけれど、山には霞がかかっていて、残念ながら「ああ、あれが」というわけには行きませんでしたが。

 

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Davos ダヴォス

 世界中の蔵相や首相などがあつまるダヴォス会議が開催される高級リゾート地。この会議、警備などが大変で開催中は交通規制で渋滞のもとになると批判もありますが、この地域にとってはあるとないとでは大違いの大切な収入源ということで、開催されたりされなかったりするたびに大きな話題になります。また、ダヴォスはトーマス・マンの「魔の山」の舞台としても有名です。
 スキーをやらない私は夏しか訪れたことがないのですが、あまり好みではありません。スイス各地にある有名スキーリゾートにありがちな、「スキーリゾートの顔」をした街です。土産物屋が軒を連ね、騒がしくて、物価も高く、街の個性みたいなものがあまり観られないのです。実際、ここはホテルやレストランだけでなく、フラットや休暇用アパートメントの賃貸料もばか高いとのこと。ドライブ途中に立ち寄ることはありますが、ここを目的としていくことはありません。

 

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Scuol スクオール

 グラウビュンデン州の(つまりスイスの)東のはずれ、ウンター・エンガディーン地方の温泉保養地です。日本の温泉と違って、スイスの温泉というのは要するに温水プールなのでが、それでもお風呂好きの私としては、あちこち試してみたい気持ちになるのです。いろいろ(ヴァルサーやアンデールなど)試してみましたが、値段と満足度がだいたい一致したのはここでした。少し遠いんですけれど。
 入場料は二段階に分かれていて、最低限のものだと大プールと野外プールといくつかの浴槽に入れるだけです。ローマ式風呂やフィンランド式サウナは別料金。でも、私はサウナも好きではないし、全裸なのに男女一緒というローマ風呂に入る気もなかったので、ただのプールだけの入場にしましたが、それでも十分楽しめました。もともと大好きな露天風呂(水着は着ているけれど)では打たせ湯やジャグジーも楽しみ、風景も堪能しました。
 街の土産物屋の数も適度で、置いているものもどこにでも売っているようなつまらない観光用土産だけでなく、きちんと厳選されている趣味のいいものが多く、温泉のあとの散策と店のひやかしも楽しかったです。

 

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Soglio ソーリオ

 オーバーエンガディーンのマローヤからイタリアのキアヴェンナへと抜ける谷間、ブレガリア谷にある風光明媚な村がソーリオです。ヨーロッパでもっとも美味な栗の産地といわれるブレガリア谷は、6月には爽やかな花の香りで満ちて、新緑にあたる陽の光の美しさはたとえるもののないほどです。
 ソーリオは少し山に入っていったところにあり、谷間を見下ろす風景も素敵ですが、さらに村の中心部に歩いていき、サリスというホテルのテラスでゆっくり寛ぐのがすきです。
 夏には、ホテルのみごとな庭を散策するのもお奨めです。秋には名物の栗を使ったお菓子を食べたりできるのでしょう。

     
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      Soglio, GR


    ソーリオからブレガリア谷をのぞむ

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Carschenna カルシェンナ

 前から一度いってみたかった「カルシェンナの旧石器時代の謎の遺構」です。スイスの中でここでだけみつかっている円形の石彫があって、考古学上たいへん貴重だと有名な場所なのですが、それが私の住んでいる村のすぐ側にあるのです。巨石文化、ドルメン、メンヒルといったものに目がない私にとっては外せない場所といってもいいでしょう。
 この谷では以前は洗礼も葬式もそこでしかやらなかったという、ホーエン・レーツィエンという高台の教会があって、そこですら根性ない私には「洗礼はともかく、棺をもってなんでこんなところまで登んなきゃいけないんだ」という山の上なのですが、カルシェンナはそこからさらに倍近くも昇った山の中にあります。実際に、その謎の遺構の近くは長いこと未踏の地となっていて、送電線を建設するときに偶然みつかったものなのです。
 昨年、母とホーエン・レーツィエンまで昇ったときに「カルシェンナへの近道はこちら」という立て札を目ざとく見つけたものの、ホーエン・レーツィエンだけでも相当の山登りだった私は、年老いた母親に鞭打ってまで、そこへ足を伸ばすという提案をためらいました。しかし、その時に「いつか暇なときにここを登ってみよう」と野望を抱いたのです。連休で多少ヒマだったのに、ダンナがぐうすか昼間から寝ているので「これはチャンス」と野望を実現することにしました。
 昇りはじめてしばらくして「あの時無理して母親を連れていかないでよかった」と気がつきました。「近道」というのは急向背で道なき道を行くようなもの。まださほど暑くない時期にも関わらず、汗だくになり、足ががくがくするほどのきつい登りで、山頂にたどり着いたときに標高を確認してたったの1100mと知った時には「ウソだ」とつぶやくほどでした。住んでいるところからたったの400mの標高差しかなかったのです。
 そこから数分のところにあるカルシェンナの石彫はとんでもない保存状態で放置されていました。野ざらしなのです。まあ、2500年ほど野ざらしのまま残っていたのだから、数年でこわれるはずもないんでしょうが、柵ぐらい設けてもいいのにと首を傾げました。一応は説明文と一緒に「保護のため、岩の上には載らないでください」と書いてあるものもあったのですが、こちらは野ざらしに弱かったらしくほとんど色が抜けていて読むのも困難な状態になっています。しかもドイツ語だけということは「海外どころか自国の他の言語圏の人も来ることはないだろう」というやる気のなさが伺えました。石彫そのものは私が思っていたよりもたくさんありました。大きな一枚岩がばらばらにいくつかある場所で、そのうちの四つに、同心円のようなものがいくつも描かれています。これが何を意味するかは不明だそうで、私にもよくわかりませんでした。ただ、儀式的なものというよりは、何らかの技術的なもの、つまりここで何かを製造しているときに出来た跡のような感じがします。問題は何を製造するとこのような跡が出来るのかさっぱりわからないことす。これだけの跡をつけるのは決して楽なことではありません。(岩が柔らかく簡単に彫れるようなものなら、現在まで残っていることはない)石器時代の人は今よりも生きるのに必死だったはずで、暇つぶしにこれだけのことをしたとは思えず、何だったのだろう考えるのも楽しく、ロマンを感じます。ただし、これは私がこういうものを大好きだからであって、これだけのために山登りの苦手な平均的日本人を連れて登ったら、友情に亀裂が入るかも、と思い、とりあえず一人で来てみてよかったと思いました。帰りは楽な、なだらかな道を降りました。時間かかりましたが下りだったし、足がそうとう疲れていたのでこう降りて正解だったと思いました。翌日から四日ほど足と背中の筋肉痛に悩まされ、また行ってみたいとはいえ当分はやめておこうと思いました。

 

     
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      Sils i. D. GR


    カルシェンナの遺構
     
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      Sils i.D. GR


    ドムレシュク谷をのぞむ

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